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2000年11月号
妊娠時期やつわりの症状に
合わせて早期の治療と診断を


 

全妊婦の3分の2に見られるつわり。妊娠5〜6週ごろから起こり、12〜16週にはほとんどが消失するが、ひどい場合はきちんとした治療が必要となる。今回は治療法について。

*食事の仕方でつわりを上手に回避する初期

 妊娠初期のつわりの治療は、軽症(日常の生活がこなせて、体重の減少もない)の場合、食事療法が主体で、他にお産に対する恐怖心を取り除いたり、気分転換などをカウンセリングする精神療法と安静が必要です。 食事療法では、胃を空にしないように何回にも分けて自分の好きなものを食べるといいでしょう。嘔吐がひどい場合は特に水分不足にならないよう、ジュースなどの砂糖が入ったものは避け、お茶やスポーツ飲料など甘みのない物をとるようにします。また、さっぱりとした酸味は食欲増進作用があるので、焼肉や魚、サラダなどにレモン汁をかけて食べるのもおすすめです。ビタミンCの補給にもなります。酸味といっても梅干しのような塩分が強いものは控えめにしてください。

 妊娠初期では食欲がないときに無理に食べる必要はありません。だから料理をする気が起きないなら、刺身、冷奴、サラダなど、手軽に食べられて、しかも低カロリーのメニューにしてみてください。それに温かいものより冷たいものの方が食べやすいようです。胎児の予後においても、つわりと、胎児の発育不全、奇形、未熟児になるのではないかと心配する妊婦さんもいますが、その心配はありません。

*妊娠悪阻中等症状では静脈への輸液療法が有効

 5kg前後の体重減少や頻回の嘔吐による脱水症状、尿中のケトン体が出た場合は、妊娠悪阻と診断でき、入院することになります。治療は安静と脱水、電解質補正、栄養補給のために、輸液療法を行います。

 輸液療法(絶食し、1日2000〜3000mlの輸液を行う)では、栄養補給として糖質を中心に電解質異常(低カリウム、低クロールになるので)を補正する目的で、各種電解質の輸液も同時に行います。脱水症状を改善する意味でも輸液療法は有効です。つわりのある時期は、ちょうど胎児の器官形成期に当たるため、薬物療法は極力控えたいのです。大事な時期なので、ビタミン剤(ビタミンB1、B6、B12、ビタミンCなど)と輸液が治療の中心となります。

 5〜7日間以上、輸液療法を行なってもケトン体が陰性化せず、食事の摂取が難しい状態では中心静脈栄養、経鼻栄養などを考慮します。ビタミンB1が欠乏するとウェルニッケ脳症(眼振、複視などの眼症状、意識障害、歩行困難などの症状を起こす)を引き起こすため、ビタミンB1の投与は必須です。

 しかし、あらゆる治療を施しても症状が改善しないと、母体の生命の危機を考え、最後の手段として根本原因である妊娠中絶を行なわざるをえないこともあります。

*妊娠中後期に起こる悪心、嘔吐は重大な疾患にも要注意

 通常つわりは妊娠中期にほぼ消失しますが、それでも悪心や嘔吐が続く場合は他の重篤な疾患の可能性も考えられます。特に妊娠後期で悪心、嘔吐に上腹部痛を伴う場合、母児ともに非常に危険な、急性妊娠脂肪肝(発生頻度は7000〜15000妊娠に1例。黄疸、肝酵素の上昇。HELLP症候群との関連性も言われている。突然発症し、肝不全を起こす。きわめて予後不良)、HELLP症候群(妊娠中毒症に合併することが多い。血小板減少、溶血、肝酵素上昇を伴う)を考慮します。母児救命のために、速やかに胎児を娩出させる必要があります。両疾患ともに原因が良くわかりません。また、妊娠中後期における虫垂炎は診断が非常に困難で、そのため炎症が腹部全体に及び、重症に陥りやすいのです。腹膜炎を併発すれば、胎児が死亡率が高くなるので、虫垂炎の疑いがあれば、積極的に手術を行なうべきでしょう。


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