女性は40歳を過ぎると、卵巣の機能が衰え、卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が低下します。そして50歳前後になると閉経を迎えます。
エストロゲンが限りなく0に近づくと、骨量が減少して骨粗鬆症や、コレステロール値が上がり、動脈硬化症、脳血管の疾患や心筋梗塞を引き起こしやすくなります。また、膣内を丈夫にするエストロゲンの減少は老人性膣炎になりやすく、性交時に痛みを伴う人も少なくないようです。若々しい肌を保つのに不可欠なコラーゲンもエストロゲンが減れば、肌がかさついたり、シワができたりします。
こうしたさまざまな症状に対して、エストロゲンを投与するホルモン補充療法は、きわめて有効な方法なのです。
このホルモン補充療法は、長期に正しく服用することが大切です。それでは、代表的な3つの飲み方をご紹介いたしましょう。
1.周期的併用法(間欠法)
閉経前後の月経が気にならない女性が主体。卵胞ホルモンを21日間飲み、飲みはじめて10日目から12日間は黄体ホルモンも一緒に飲む。その後7日間は服用をやめ、再び同じサイクルで飲みはじめる。毎月、休薬中に月経のような子宮出血がある。
2.周期的併用法(持続法)
閉経前後の更年期症状の強い女性が主体。卵胞ホルモンは毎日休まず飲み、黄体ホルモンのみ毎月1日から12日間飲む。黄体ホルモンを飲み終えると、たいてい月経のような出血があるが、ないときもある。
3.持続的併用法
閉経後数年経った女性が主体。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方を毎日飲み続ける。3〜6か月間は不正出血があることも。やがて出血はみられなくなるので月経のような出血があるのがわずらわしい人に向いている。
以上3つの方法は、卵胞ホルモンは、子宮体ガンと乳ガンの発生に関与することがあるので、黄体ホルモンを併用する方法です。そのほか、子宮を摘出した女性には子宮がないので出血は起こらないし、子宮体ガンの心配がないので卵胞ホルモン単独持続法があります。最近卵胞ホルモンパッチ剤が開発され(お腹に貼りつけて皮膚から吸収する貼り薬)肝臓に負担をかけることがありません。1日おきに使用しますが、皮膚アレルギーが難点です。いずれにしても、長期間飲み続けることで効果が得られます。
服用期間は、動脈硬化、骨粗鬆症、膣炎の治療や予防のためなら、10年、20年、一生薬を飲む必要があります。
アメリカでは閉経以後の女性の25%が飲んでいると言われていますが、日本では、1%程度です。低用量ピルでも、日本人は副作用を極端に恐れて、まだ服用する人は少ないようです。日本人は、薬好きと一般に思われていますが、実際はそうでないようで、正しい薬の知識と人生哲学がないように思われます。
また投与中、肝機能、コレステロール、中性脂肪、腎機能などの検査、子宮頚ガン(ウイルスが関与し、ホルモンと関係ない)、子宮体ガン、乳ガン検診、血栓症の注意など、定期検査はぜひ行ってください。
服用期間中は決まった時間に処方どおりに服用することが大切で、そうしないと不正出血が起こり、薬を中止する最大の原因となります。特に子宮体ガンを心配する人がありますが、黄体ホルモンの併用で、ほとんど心配ありません。