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2001年1月号
生理的黄疸に潜む
危険な病的黄疸


 

新生児特有の黄疸がある。生理的なものであれば、数日で自然に症状が解消するため、さほど心配はいらないが、その中に病的なものもあるので注意が必要だ。もし治療が遅れれば、最悪の場合、脳性麻痺などの重度の障害を残すこともあるという。新生児特有の黄疸は生理的と病的がある。

 *生理的黄疸に潜む危険な病的黄疸

 黄疸は、皮膚や眼球結膜が黄色くなるもので、赤血球の破壊に伴って放出されたヘモグロビンの異化によって作り出されたビリルビンの過剰状態がその原因です。新生児黄疸は、胎内環境から胎外環境へ移行する過程の生理的な現象として、すべての新生児に見られます。しかし、その中には病的な黄疸も隠れているので、私たち産婦人科医は注意が必要なのです。

 通常は産後2〜3日で黄染が見られ、1週間ほどで自然消失していきます。しかし、産後24時間以内の早期黄疸、ビリルビン値が高い重症黄疸、症状が長く続く遷延性黄疸は病的な黄疸と診断できます。

 遷延性黄疸は母乳性黄疸などの比較的問題が少なく、脳障害を引き起こす核黄疸も滅多に起こしません。極端に母乳の量が少ないと黄疸が強くなるようです。母乳が出ていなければ赤ちゃんの体重も増えないので、当院では退院後2週間ほどで一度検診に訪れてもらい、経過診断を行なっています。母乳性黄疸以外にも、新生児肝炎や先天性胆道閉鎖症(便の色が白い、直接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症)などが原因になっていることもあるので、原因の検索も必要です。

*母児間の血液型不適合で起こる早期黄疸

 早期黄疸は溶血によって多くのビリルビンが生じるため、早急な原因検索と治療が必要です。母児間の血液型不適合によるRh不適合、ABO不適合が多いようです。いずれも児の血液に含まれる抗原が母体の免疫能を刺激して抗体を作り、その抗体が胎盤から児に入り込み、溶血を起こします。

 Rh不適合は、母親Rh(−)、父親Rh(+)で、Rh(+)の子供を産むとRh不適合を起こします。1回目の妊娠で母体に入った児の血液によって抗体ができるので、1回目よりも2回目以後のほうが溶血を起こして問題になります。そこで出産後72時間以内に抗Rhd人免疫ガンマグロブリンを注射して、次回の発症を予防します。また、赤ちゃんは生まれてすぐにさい帯血を調べて光線療法あるいは交換輸血の必要があるか、決定します。

 Rh不適合に比べてABO不適合は多く、母親の血液型がO型で、児がA型、B型の場合に起こり得ます。1回目の妊娠でも起こり得ます。これはA型、B型の共通抗原が自然界に広く分布、成人は食物や大腸菌などによってすでに感作されているためです。Rh不適合の場合にくらべて重症になることは少ないが、核黄疸の危険性はあり、早期に光線療法を行ないます。

*黄疸の治療法

 黄疸の症状が見られた場合、経皮ビリルビン濃度測定法(ミノルタ黄疸計)で1日2回測定を行い、高ビリルビン血症であれば、治療を開始します。黄疸の治療には、まず光線療法(光エネルギーによって、非水溶性のビリルビンを水溶性に変化させて、胆汁中へ排泄する)を行ないます。実際、この治療法ができてからというもの、リスクの高い交換輸血が減りました。光源は緑色光が最も効率がよく、DNA損傷の危険も少ないといわれています。

 もし、光線療法をしてもビリルビンの数値が軽減できず、第一期症状(哺乳力が低下したり、ぐったりしたり、寝てばかりいる)が出たときは、交換輸血を行ないます。しかし輸血という臓器移植はGVHD(移植片対宿主病)や感染の危険があるので、必要最低限に留めることが望ましいのです。

 日齢によって、ビリルビン値による光線療法、交換輸血の適応基準は定められていますが、低体重、感染、低蛋白、低血糖などがあれば、核黄疸の危険性はさらに高くなり、ビリルビン値が基準以下なら、その危険性はないという保証はないので、こまめにビリルビン値を調べ、臨床症状(哺乳力は良いか、ぐったりしていないかなど)を総合的にチェックし、早期診断し、光線療法を早期に開始することが大切です。


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