マスコミが取りあげたため「ペットによる感染症」は、多くの人が気にしている。しかし、もっと心配すべき性的感染症が広がってきているそうだ。
*ペットなどの動物による 感染症、その実態は!?
最近、よく妊婦さんに聞かれるのが、ペットなどの動物による感染についてです。実際にペットを飼っている妊婦さんの中には、かなり深刻に悩んでいる方もいるようです。
動物による感染は、トキソプラズマ原虫という寄生虫が原因です。ネコの便にいて、直接さわらなくても、便にたかったゴキブリやハエなどが触れた食器や調理器具を使うことによって感染したり、牛や豚などの生肉を食べて感染したりします。
ペットを飼っている人は、妊娠予定前に、トキソプラズマ血中抗体価を検査しておきましょう。抗体価が高くても、妊娠前からの感染では、胎児感染は起こらないので、心配する必要はありません。しかし抗体がなく、妊娠中に初めて感染した場合は、流産や早産、奇形、発育不全、水頭症、知能・視覚障害など、大きな影響が生じてきます。
妊娠中に抗体がない場合は、ネコに近寄らない。また、ペットがいる家では、料理や食事の前には手をよく洗う、調理器具や食器は清潔に保つように心がけるといいでしょう。
しかし、過剰な心配は妊娠によくありません。万一、妊娠中に感染がわかっても治療は行なえます。心配なら、一度検査をしておくといいでしょう。
*クラミジアとは、現在 もっとも多い性感染症
先に述べたトキソプラズマ症など、妊娠に影響を与える病気はいくつかあります。最近、特に目立って増えてきているのが、クラミジア・トラコマティス感染症です。
クラミジアは欧米ではもっとも多い性感染症です。日本も生活の欧米化、性の自由化などで広まっていき、淋病や梅毒といった他の性感染症を上回って、現在、もっとも頻度の高い性感染症だと言われています。
私の病院を訪れる妊婦さんも、5〜10%がクラミジアにかかっていました。
クラミジアは細菌とウイルスの中間に位置する病原微生物です。性交によって感染し、人間の細胞内にはいりこんで増殖を繰り返します。
女性においてはオリモノがちょっと多くなるほどで、痛みなどはほとんど伴わない無症状です。男性の場合は、尿道炎などの症状が現われます。
症状がないため、患者本人はまったく気付かずに、性交を通して相手にうつしてしまう…こうしてクラミジアは蔓延していったのでしょう。
*身体の奥へはいり込み不妊症や産道感染で新生児の肺炎、結膜炎の原因に
クラミジアにかかると、女性の体内ではどのようなことが起こるのでしょうか?
まずは子宮の入口である頚管部で炎症が起こります。炎症が起きても痛みはなく、自覚症状はほとんどありません。そして、そのまま放っておくと、子宮内に入り込み、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内炎、腹膜炎というように身体の奥深くへと、侵入していくこともあるのです。
卵管炎は、炎症あるいはその後遺症として、卵管内が詰まったりして不妊症の原因になります。また、妊娠しても子宮外妊娠を引き起こす可能性があるのです。
妊娠においてクラミジアの影響は、分娩時に赤ちゃんが産道感染を受けて、結膜炎や肺炎を引き起こしたりします。その肺炎によって、新生児が死に至るという最悪のケースも考えられます。
こういったことからも、クラミジアは早期治療が必要です。また治療は、再発を防ぐためにパートナーとともに行なうことも大切です。
治療は、増殖サイクルを考慮して、10日〜2週間の抗生剤を投与します。そして、治療終了後2週間目に検査を行ない、再発していないかを調べます。
妊娠中でも治療は行なえます。妊娠に気付いたら、早めにクラミジアの検査を受けてください。
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