出産という大仕事を間近に控えた妊婦さんは、さまざまな不安を抱えている。陣痛、逆子、万一のときの帝王切開…。マザーズクラスで出産に対するオリエンテーションを学べば、そんな心配も無用になるはず。
*「逆子=帝王切開」という意識は捨てましょう
妊婦さんに「逆子ですね」というと「では帝王切開するんですか?」という質問がよく返ってきます。実際、逆子の場合、帝王切開で産むケースは国内をはじめ、欧米諸国では当たり前のようになっているので無理もありません。
しかし当院では、レントゲンや超音波で、骨盤と児頭の関係、児頭の前後径、位置、赤ちゃんの体重、子宮口の状態を見て大丈夫そうなら、オバタメトロを使用し、経膣分娩を行ないます。
当院の過去10年間のデータでは、分娩総数は4537例あり、逆子は136例(3%)で、その内の86%の117例は経膣分娩でした。
私の長女は、初産、明け方の破水、全足位の逆子と最悪のケースでしたが、全身全霊を傾け我が児のお産に立ち向かい、無事に産まれました。もし、このときに、安易に帝王切開をしていたら、その後授かった3人の子供たちの誕生に、妻の母体は耐えられなかったかもしれません。
帝王切開は母体へのリスクが高く、肺塞栓(最悪の場合、死に至ることもある)、術後の癒着が起きたり、次の子供のときに子宮が破裂するなど、母子ともに危険にさらされる可能性も高くなります。
*逆子は珍しくない。多くは重力で正常な位置へ
また、逆子と診断されてもすぐに悲観する必要はありません。決して逆子は珍しいことではないからです。
妊娠16〜23週では、約45%が逆子であるといわれています。しかし、成長とともに重力の影響を受けて、胎児自身の頭の重みで自然と頭が下になるので、それほど心配はいりません。だから24〜27週には、逆子はその3分の1の15%、最終的には3〜5%になります。
つまり27週までは、逆子と診断されても何もしなくても大丈夫なのです。ただ、帯やコルセット、きついズボンなどは避けた方が、赤ちゃんは正常な位置へ戻りやすいでしょう。
28週以降でも逆子なら、赤ちゃんの背中を上にして横向きに寝るようにしたり、逆子矯正の体操を行なったりします。しかし、お腹が張っている人や早産傾向のある人は、医師の診断を仰ぎ、やり過ぎに注意すること。
*出産はとても大変なもの。陣痛はそのエピローグ
そして、いよいよ出産が近づく妊娠10か月めに入ると「いつお産になりますか」と妊婦さんからよく聞かれます。
夜に陣痛が始まり、明け方に出産するケースが多いですよ、とは答えられますが、〃いつ〃なのかは、地震の予測と同じようにはっきりとはいえません。 妊婦さんの中には、出産予定日をそのまま自分の出産日だと思い込んでいる人もいます。しかし、妊娠37週を過ぎれば、いつ産まれてもおかしくないことを知っておいてください。当然、陣痛も37週を過ぎれば、いつ来てもおかしくはないのです。陣痛が来て、その間隔が10分おきになれば、ようやく〃いつ〃産まれるのかが予測できます。初産で平均15時間、経産ではその半分ぐらいで誕生します。
また、陣痛そのものに対して恐怖心を抱く妊婦さんも少なくありません。しかし私は、大丈夫とは言わずに、大変だよと、いつも言うようにしてます。
陣痛が起こらなければ、出産は始まりません。痛くて痛くて我慢できないときが、出産のピーク(産まれる寸前)で、この痛みこそが順調に出産が進んでいる証拠なのです。
出産という大業を成し遂げた充足感は、母親への自覚、育児への自信などへ繋がります。
だから私は陣痛に耐えている妊婦さんには「旦那さんやお子さんにいいところを見せるチャンスだから、ガンバレ」と励ますようにしているのです。
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