以前、このページで出産予定日を過ぎても、心配したり、あせったりするのはかえって陣痛を遠ざけるもとということを書いた。しかし、予定日から2週も過ぎてしまうと、それはそれでさまざまな問題が起こってくるようだ。
*妊娠42週を過ぎても出産の兆候なしは問題
出産予定日は、最終月経から数えて280日といわれており、妊娠37〜40週の間に生まれれば問題はありません。しかし、最終月経がいつあったのかは妊婦さんによる自己申告ですから、生理不順の人や、思い違いをしていることもあるので、エコーなどの検査で最終的には予定日を算出しています。妊娠37週を過ぎれば、いつ出産が始まってもおかしくないので、当院ではそのころから分娩監視装置で、胎児の様子や子宮の収縮などをチェックしています。
妊娠42週を過ぎても、いっこうに出産の兆しがない過期妊娠は問題です。過期妊娠を、単純に最終月経より294日以降とすると全体の1割に及びますが、妊娠の初期にエコーなどで修正すると3%くらいになります。
*過期妊娠における4つの問題点
過期妊娠はとてもハイリスクで、これから挙げる4つのことは要注意なのです。
1.巨大児
胎児が4000gを超えると、難産になり、吸引、鉗子分娩、帝王切開が増加します。産道から頭が出ても、肩がひっかかって出てこないことがあります。いわゆる肩甲難産となり、肩の娩出の際、頚部側方過度伸展を起こし、分娩麻痺が起こり、上肢、手の運動障害になることがあります。病院では、胎児があまり大きく育つ前に出産に踏み切るようにしていますが、糖尿病の人は胎児が大きくなりやすいので要注意です。
2.羊水減少
38週を過ぎると、羊水がだんだんと減ってきます。羊水は胎児を守る大事なものですから、その減りぐあいはエコーでしっかりとチェックします。少なすぎると、へその緒が圧迫され、胎児は窒息状態におちいってしまいます。胎児は苦しいので便を出すため、さらに羊水はドロドロになります。羊水量は少ないので、さらに粘調な混濁羊水となり、産道で胎児があえぐチャンスも増え、それを胎児が飲み込んで肺に詰まると、呼吸障害を引き起こします。このような胎便吸引症候群は、かなり危険な症状なのです。
3.胎盤機能不全
胎児は胎盤から酸素を得ているので、胎盤が機能が低下すると、胎児仮死になりやすく、お産のストレスに耐えられなくなり、帝王切開率が増加します。
4.子宮内発育遅延
この症状が3の胎盤機能不全と併発して起こると、胎児の危険はさらに高まり、早くお産にする必要があります。
*出産間際は胎児を監視し身体をよく動かすように
出産が近づいたら、胎児の様子を監視することはとても大切です。分娩監視装置は、胎児に異常があれば波形で現われますし、尿中のホルモンを調べることで胎盤の機能を知ることができます。また、超音波検査や体重のチェックもあわせて行い、胎児を監視します。
最近はカラードップラーという検査が導入され、これでは胎児の血流を映し出し、元気かどうかを判断することもできるようになりました。胎動も胎児の様子を知る大切な要素です。元気がないと鈍くなるので、胎動にも注意してみてください。
出産は待っていればいいというものではありません。出産予定日が近くなったら、家事を積極的に行うなど、身体を動かすようにすれば、よい陣痛を生み出してくれるでしょう。
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