女性生殖器の悪性腫瘍のうち、最も頻度が高く、死亡数が多い子宮がん。もし、がんが発見されたとしても、早期ならば根治できることを念頭に入れ、治療を進めてほしい。
*妊娠の定期検診でがんが発見されることも
子宮がんは子宮頸部に発症したものが子宮頸がん、子宮体部にできたものが子宮体がんと、大きく2つに分類されます。全子宮がんの約75%を占める子宮頸がんは、ごく初期のがんでも発見しやすく、治療すれば100%近い5年生存率を得られます。
子宮頸がんは、市町村実施のがん検診のほか、妊娠したときに発見されることも少なくなく、当院でもそのようなケースがいくつかありました。その中の1つの実例をお話しましょう。
*出産後にがんの手術を控えていた女性のケース
彼女は40代半ば、妊娠中でしたが上皮内がん(上皮内にがん細胞を認めるが、がん細胞が上皮内にとどまっている)があったのです。
細胞診(子宮膣部と頸管内を綿棒などで擦過して、細胞を採取し、スライドガラスに塗抹、固定、染色し、顕微鏡で細胞の形態を調べる)とコスポスコピー(子宮頸部に光を当てて拡大鏡で視診する方法。酢酸加工すると、目では見えない微細な変化を発見でき、異常病変の程度、部位、広がりを知ることができる。前がん病変初期がんを見つけるには必須な検査で、婦人科独特のがん診断法である)で下でねらい組織診施行0期上皮内癌と当院で診断しました。
幸い、ごく初期のがんであったため、子宮を温存しての出産が可能なので、がんの手術は出産後にがんセンターにて行うことになっていました。そして逆子でしたが、無事、普通分娩で出産。手術の日取りも決まっていましたが、彼女は知人から聞いた民間療法で治療したいの一点張り。東京の大学病院2、3を受診し、心配ないとのこと。その病院に連絡しましたが、そのような患者さんは見えていないとのことでした。その後、何度も手術を勧めましたが、拒否され、ついには音信不通になってしまったのです。
*恐がらないで正しい知識を身につけること
彼女のような初期のがんならば、完全に治すことができるのに、治療を放棄してしまうのは実に口惜しい気持ちにさせられます。もし、がんと診断されても初期のがんは恐くないことを知ってもらいたいですね。それには医師まかせでなく、自分自身でも正しい知識を持つことが大切です。不安や心配事があれば、わらにでもすがりたい心境になるでしょう。そんなとき、あれこれと周りの人の意見に惑わされないためにも、正しい知識は必要なのです。
また、がんと診断された人の中には、何軒も病院をはしごする人も少なくありません。「間違いであってほしい」という気持ちもわからなくありませんが、子宮頸がんの初期の場合は微妙であるため、他院で細胞採取の直後だと、偽陰性になりやすく病院によっては結果が異なることもあります。初期は病変が小さいので、一度組織診でがん細胞をとってしまうと、ほかの病院では見つからないのです。もし病院を変える場合は、最低2、3週間は間をあけ、前にほかの病院で検査を行ったことを告げてください。また1、2週間ビデなど膣内を洗浄すると偽陰性になるので、その旨を医師に告げることが大切です。ほかの病院でもう一度検査を受けたいと申し出れば、医師は紹介状と組織診の標本などを出してくれるはずです。検査を一からやり直すのは、患者の体に負担も、お金もかかるし、正確な結果もでにくいのです。前の検査結果や診断があれば、医師同士で情報交換もでき、そのほうが最善の診断、治療を行なえます。
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