1999年11月号
正しい性知識を持って、
１日１錠、毎日飲むことが
ピルの服用には大切

この秋に認可された低用量ピル。避妊方法としては最も確実といわれており、これによって俗にいう「望まない妊娠」は減っていくだろう。しかし、この傾向を手放しに喜ぶには、まだいくつかの問題点があるようだ。

*ピル認可で心配されるいくつかの問題点

　ピルは人工的に合成された卵胞ホルモンと黄体ホルモンからなる薬です。正しく服用すれば、妊娠率は０・１％と避妊法の中で最も優れたものです。しかし、使用に関してはいくつかの問題点があります。欧米に比べて性教育が遅れている日本では、性病についてや避妊方法、生理のメカニズムなど、正しい知識を持っている人が実に少ないのです。そういった未熟な性知識が性病の蔓延につながってしまうのです。

　また、妊娠出産のすべてが計画的なものではなく、４人に１人の割合は予定外の妊娠です。しかし、ピルが認可されたことで、予定外の出産はぐっと減ってくるでしょう。そのため今よりも少子化が深刻になったり、いわゆる「できちゃった婚」というのもなくなって婚期が遅くなるかもしれません。

*ピルはあくまで避妊薬。性病予防はできない

　賛否両論があるピル認可ですが、実際のところ重要なのは、服用者の意識といえます。私がピルをすすめたいのは、きちんとした妊娠の計画を持っている人。将来設計をパートナーと一緒にしっかりと持っている人、男女共に性病でないことを確認している人たちです。しかし、実際にピルを服用したいと来院する人の中には、若年者で性行動が頻繁な人も多く、そういった人には不特定多数のパートナーを持つ人も少なくないようです。性病予防のために、コンドームの併用が必要です。

　ピルを飲むにあたり、パートナーと一緒に性病検査を受けてください。そうすることが性病予防になるのです。

*ピルの服用について

　ピルは通常21錠か28錠で１シートになっています。28錠タイプの場合は、飲み忘れないように、最後の７錠はプラセボー（偽錠）になっています。１日１回、同じ時間に順番通りに飲んでいきます。低用量ピルには一相性（卵胞ホルモンと黄体ホルモンの割合がすべて同じ）、二相性、三相性の３種類があり、二相性、三相性の場合は、正常月経周期の分泌パターンにあわせるために、調合してあるホルモンの量が違うので、必ず順番通りに飲むことが大切です。

　服用を開始するには、生理の１日目から飲むのと、生理が始まった次の日曜から飲むサンデースタート方式というのもあります。この方式では、週末に生理が来ないので、週末に遊びたい人にはおすすめです。

　飲み忘れた場合は、24時間以内に気付いたら、すぐ飲んで、その日の分も通常通り服用します。２日以上連続して飲み忘れたら、次の生理まで服用を一時やめておきましょう。

　ピルを飲みはじめると、最初の１〜３か月は、嘔吐、悪心、頭痛、不正性器出血などがあり、ピルを中止する最大の原因となっていますが、３か月を過ぎるとそれらの症状の消出してきます。ピルを飲むにあたって最も重要なことは、検診です。検診には、問診、内診、子宮頚癌検診、乳房、性病検査、血圧、体重、尿、血液検査などがあります。３か月ごとの検診（クラミジア等の性病検査、血圧、体重測定、体脂肪率、尿蛋白、尿糖）、そして６か月ごとに血液検査（肝機能、血中のコレステロール、中性脂肪、血栓症の疑いがあれば血液凝固系検査）、１年ごとに子宮頚がんの検査を行ないます。こうした検査はお金がかかるので嫌がる人もいますが、健康診断ができるのはメリットと考えて受けてください。

　これらの検査を受けない人は、ピルを飲む資格はありません。